夏場の倉庫は、熱がこもりやすく、屋外よりも過酷な環境になる場合もあります。
従業員の安全を守ることはもちろん、生産性や離職防止の観点からも、熱中症対策は欠かせません。
本記事では、倉庫作業で取り入れられる熱中症対策を紹介します。
安全で快適な作業環境づくりに、ぜひお役立てください。
倉庫作業中の熱中症を未然に防ぐための具体的な対策は以下のとおりです。
・遮熱材の設置
・断熱材の設置
・空調機器の新調
・スポットクーラーの導入
・大型ファン・送風機の活用
・ファン付き作業服の支給
・冷却タオル・アイスベストの支給
・経口補水液・塩タブレットの支給
・作業員の体調チェック
・作業スケジュールの見直し
・適度な休憩時間の確保
それぞれの対策を紹介します。
夏場の倉庫は、太陽からの輻射熱が屋根や外壁を通じて室内に蓄積され、室温が外気以上に上昇することも珍しくありません。
遮熱材を導入することで、輻射熱を反射し、倉庫内の温度上昇を効果的に抑えることが可能です。
超薄型高遮熱材シャネリアは、屋根や外壁から侵入する輻射熱を最大97％カットする高性能な遮熱材です。
厚さ4mmまたは8mmと薄型ながら、最大で室温を最大15℃も低下させた実績があります。
また、空調負荷を軽減するため、ピーク時には最大45％の消費電力の削減につながったケースも報告されています。
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断熱材は伝導熱や対流熱を遮る役割を果たし、外部からの熱の侵入や建物内部からの冷気の流出を防ぎます。
ただ倉庫の温度上昇の大きな要因となるのは、輻射熱です。
太陽光や機械から発せられる目に見えない赤外線の熱で、一般的な断熱材では遮ることができません。
遮熱材は輻射熱を反射する効果があり、断熱材と組み合わせて使用できる場合もあります。
古くなった空調機器を使用している場合、冷却効率の低下により適切な室温管理ができず、従業員の体調に悪影響を与える場合も少なくありません。
最新の空調機器は省エネ性能や冷却性能が向上しており、限られたエネルギーで効率よく温度をコントロールできます。
ただし新しい機器を導入するだけでなく、日常的なメンテナンスも重要です。
エアコンのフィルターにホコリが詰まっていると、風量や冷却性能が低下します。
定期的な点検や掃除を行い、機器が本来の性能を発揮できる状態を維持するよう心がけましょう。
倉庫は天井が高く、建物内の空間が広いため、全体を空調で冷やすには多くのエネルギーとコストが必要です。
スポットクーラーを導入すれば、必要な作業場所に冷気を直接届けられます。
なお、スポットクーラーは設置工事が不要なため初期導入のハードルが低く、レンタル対応の機種もあるため、短期間の暑さ対策にも効果的です。
大型ファンは倉庫の広範囲にわたり空気を動かし、熱が溜まりやすい高所の空気をかき混ぜて、温度の偏りを抑えることが可能です。
エアコンやスポットクーラーを併用している場合でも、送風機を使うことで冷気を効果的に循環させ、冷房効率の向上にもつながります。
ファン付き作業服は、背中や脇腹部分に小型ファンを内蔵しており、服の中に外気を取り込み循環させ、体温の上昇を抑える働きをします。
空調設備が十分でない広い倉庫やスポット的な冷却が難しい現場でも、個人単位で体感温度を下げられる点がメリットです。
バッテリーで稼働するため電源の有無に左右されず動けるため、作業の妨げにならない点も好まれています。
冷却タオルは、水で濡らして絞るだけで気化熱により冷却効果が得られ、首元や額に巻くことで深部体温の上昇を抑えやすくなります。
アイスベストは冷却材をベストのポケットに装着するもので、背中や胸部など広範囲を集中的に冷やせるアイテムです。
空調設備の設置が難しい現場や大掛かりな対策がすぐに取れない場合でも、個人用暑さ対策グッズの導入は、すぐに実践できる熱中症対策の一つです。
熱中症対策は水分補給だけでなく、塩分やミネラルの補給も欠かせません。
大量の汗とともに体内のナトリウムやミネラルが失われるため、経口補水液や塩タブレットを支給しましょう。
倉庫の高温多湿な環境下では、軽い脱水や疲労が知らず知らずのうちに蓄積され、急に体調を崩すケースがあります。
作業開始前・中・後のタイミングで、顔色や発汗の異常、ふらつき、倦怠感などの初期症状を確認しましょう。
日々の声かけやチェック体制を継続的に行うことで、熱中症の重症化リスクを減らすだけでなく、職場の安全意識やチームワークの向上にもつながります。
倉庫のように空調の効きづらい広い空間では、外気温が最も高くなる時間帯の作業は熱中症のリスクを高めます。
比較的涼しい午前中や夕方に重点的な作業を行い、気温が最も高くなる時間帯には長めの休憩を取る、もしくは軽作業に切り替えるなど検討してみてください。
作業時間中に適切なタイミングで休憩を取ることで、体温の上昇を抑え、集中力や判断力の低下も防げます。
現場の管理者が、暑さ指数に応じて休憩回数を調整する仕組みを導入するのも有効です。
現場での安全を確保し、安定した業務を継続するためにも、熱中症対策は欠かせません。
・従業員の健康と安全を守るため
・業務効率の低下を防ぐため
・製品劣化を防止するため
・人材を定着させるため
なぜ倉庫の熱中症対策が重要なのかを解説します。
夏場の倉庫は外気以上に気温が上がりやすく、高温多湿の環境下での長時間作業は、熱中症や脱水症状のリスクを高めます。
熱中症は初期症状に気づきにくく、我慢して作業を続けることで急激に重症化するリスクが高いです。
従業員が安心して働ける環境を整えることは、事業の安定運営のためにも欠かせない重要な取り組みといえます。
倉庫の高温環境は、従業員の集中力や判断力を低下させ、業務効率にも大きな影響を及ぼします。
ピッキングの誤りやフォークリフトの操作ミスなどが起こりやすく、作業の正確性や安全性が損なわれるリスクが高いです。
体調不良による欠勤が発生すれば、人員配置の見直しや作業の遅延につながり、納期の遅れやお客様満足度の低下を招く恐れもあります。
倉庫では、保管環境の温度や湿度が製品の品質に影響します。
外気温の上昇や屋根からの輻射熱によって倉庫の温度が急激に高くなれば、商品が熱によって変質や変形、劣化するリスクは避けられません。
特に食品や化学製品、精密機器など温度管理が重要な商品は注意が必要です。
劣化した製品は返品や廃棄につながるだけでなく、取引先からの信頼を損ねる恐れもあります。
倉庫の高温環境が続くと、体力的な負担から離職を考える従業員が増えるかもしれません。
遮熱や空調設備の改善など暑さ対策をしっかりと行うことで、作業環境は変わります。
快適な職場づくりは、従業員の定着率を向上させるだけでなく、求人応募時の印象にも直結する重要な取り組みです。
倉庫で熱中症が起きやすい主な原因は以下のとおりです。
・空調設備が不十分
・熱がこもりやすい構造
・重労働や長時間作業による負荷
・暑さへの慣れや体調といった個人差
それぞれの理由を解説します。
倉庫は天井が高く、空間が広いため、家庭用のような空調では冷却効率が十分に発揮されにくい構造です。
大型搬入口の開閉が頻繁にあれば、せっかく冷やした空気が外に逃げてしまい、常に外気の影響を受けやすい状態が続きます。
倉庫は金属製の屋根やコンクリート壁など熱を吸収しやすい建材で造られており、直射日光の影響を大きく受けやすい構造です。
日中に太陽の熱を蓄積しやすく、外気温以上に室温が上昇するケースも少なくありません。
開口部が少ない、もしくは換気設備が不十分な倉庫では、内部にこもった熱が外に逃げにくく、夕方になっても高温状態が続くこともあります。
倉庫では荷物の仕分けやピッキング、フォークリフトの運転など身体を動かす作業が多いです。
荷物の運搬や立ち作業が長時間続くと、体温が上昇しやすくなり、大量の発汗によって体内の水分と塩分が急速に失われます。
高温多湿の環境下が続くと、体温調節機能がうまく働かなくなり、熱中症のリスクが高まります。
倉庫では、新入社員や高齢者は暑さに慣れておらず、体温調整がうまくいかないこともあります。
睡眠不足や疲労、体調不良などが重なると、熱中症になるリスクが高いです。
また、本人が初期症状に気づかず、我慢して作業を続けてしまうケースも少なくありません。
倉庫作業は高温環境や重労働が重なるため、特に夏場は熱中症のリスクが高いです。
企業は、従業員の健康と命を守るためには、組織として積極的な対策を講じることが求められます。
遮熱材の設置や空調設備の整備、ファン付き作業服や冷却グッズの支給など、現場の状況に応じた対策を実施することで、労働環境は改善できます。
できることから一つずつ対策を始め、安心・安全で快適な物流現場を実現していきましょう。
