鉄工所に必要な暑さ対策とは?工場内が暑くなる原因とその解決策について
2026.8.6
「工場内が1日中暑すぎる…」
「エアコンをつけているのに、全く効いていない。」
夏になると、鉄工所の現場はまるで蒸し風呂のようになります。この記事では、鉄工所ならではの暑さの原因を明らかにしたうえで、何から手をつければいいのか、現場目線で具体的に解説していきます。
工場の暑さ対策を調べると、換気やスポットクーラーの話が数多く出てきます。しかし、鉄工所の現場では、それだけでは足りないと感じているはずです。鉄工所には、他の工場にはない特有の暑さの事情があります。
鉄工所では、建物内で発生する熱が暑さの大きな原因となっています。溶接時のアーク熱や鋳造・加熱炉からの高温・金属加工で生じる熱などが室内に放出されるためです。これは、他の工場にはあまり見られない鉄工所特有の特徴といえます。
鉄工所の暑さでつらいのは、この建物内の発熱の上に、建物外からの熱が重なることです。例えば、夏場の金属屋根の表面は60℃近くに達し、その熱は空気を伝わって工場内へ侵入してきます。
内からの熱と外からの熱に挟まれた二重の暑さが鉄工所の現場を過酷にしています。
鉄工所では、対策の選択肢自体が制限されるという特徴もあります。溶接の火花やスパッタが飛ぶ現場では、燃えやすい素材のものは使えませんし、送風の向きによってはヒュームを拡散させてしまうこともあります。
他の工場であれば導入できた暑さ対策設備が、設置できないといったケースがあります。
工場が暑いのは当たり前。暑さは我慢するもの。このように思っていませんか?
この暑さを放置すると、事業に関する多くの問題が発生してしまいます。例えば、代表的なものに以下の3つが挙げられます。
高温環境での作業は、熱中症のリスクを大きく高めます。火気や重量物を扱う鉄工所では、判断力やわずかな注意力の低下が重大な事故につながりかねません。
暑さは製品そのものにも影響します。金属は温度によって伸び縮みするため、工場内が高温になると加工精度が低下しやすくなります。鉄工所にとって温度管理は、重要なファクターです。
暑さで耐えられないという印象は、若手の離職や採用難につながります。働きやすい環境づくりは、これからの鉄工所にとって経営課題の一つといえるでしょう。
暑さは我慢するものではありません。適切にその原因を突き止めて、対策を実施していくことが、円滑な事業運営につながります。
ここで一つ、暑さ対策を実施した鉄工所様の事例をご紹介します。
事例:屋根への遮熱対策で室温を3〜5℃下げた長崎鐵工所様
岡山県備前市の株式会社長崎鐵工所様(創業77年)は、鉄鋼から鉄道車両、エアロスペースまで幅広いものづくりを手がける企業です。この現場でも、鉄工所ならではの暑さが課題になっていました。
屋根に遮熱シート「シャネリア」とカバー工法を施工。その後、外壁の遮熱塗装、窓の遮熱ロールスクリーン、換気扇の増設へと対策を広げていかれました。
結果、室温は3〜5℃低下。長﨑社長は「外から入ったとき、以前と全然違うのが体感で分かります」と話します。何より、施工後は熱中症やその疑いのあるスタッフが一人も出ていません。
このように、暑さ対策を行うことで、作業環境の改善に成功した企業様もいらっしゃいます。
それでは、本題に戻って鉄工所内が暑くなる原因についてご説明していきます。
冒頭で鉄工所の暑さには、二種類あるとお伝えしました。一つは、建物内で発生する溶接や炉などからの熱。もう一つは、建物外からの熱です。前者はわかりやすいですが、後者の熱はどのような仕組みで建物内を暑くしているのでしょうか?。
建物内の暑さの最大の原因は屋根であることがほとんどです。とくに金属製の折板屋根は、夏場の直射日光による輻射熱で表面が60℃近くに達します。この熱は、屋根から工場内へ一日中降り注ぎます。
少し詳しく説明すると、熱は「伝導熱・対流熱・輻射熱」の3種類に分けることができます。このうち、建物内の熱のうち75%を占めるのが、輻射熱です。太陽から放射される輻射熱によって、室内温度は高くなっていきます。
輻射熱への対策を遮熱対策と言いますが、遮熱対策をすることで、室内温度を改善することができます。
それでは、工場のどこの遮熱対策をすればいいのでしょうか。
まずは、太陽光が1日中当たる屋根の遮熱対策をご検討いただくと良いと思います。例えば、先述した長崎鐵工所様でも屋根に遮熱シートを張ることで、遮熱対策を行いました。
遮熱対策には、主に遮熱シートと遮熱塗装があります。遮熱塗装は屋根に塗って輻射熱を反射する手軽な方法で、遮熱シートは反射性の高いシートを屋根に貼る方法です。
遮熱塗料は初期費用が安い一方で効果と耐久性に課題があります。遮熱シートは初期費用が高いものの、ランニングコストがかからず電気代の削減も期待できますので、長期的には費用対効果が高くなる傾向があります。
詳しい違いは、遮熱シートと遮熱塗装の比較記事もあわせてご覧ください。
初期費用こそ高くなりますが、長期的に高い効果を発揮するため、遮熱シートの施工を推奨します。一度施工すれば、ランニングコストはほぼかからずに、空調効率の改善による電気代の削減も期待できます。
中長期的な視点で見ると、遮熱シートの施工の方がメリットが大きいと考えられるので、遮熱対策としておすすめなのは、遮熱シートです。
「屋根→空調・換気→個人装備」の順に進めるのがおすすめ
熱の入口である屋根への遮熱シートの施工をせずに、換気や冷房服を導入しても根本解決にはなりません。一時的には凌げるかもしれませんが、工場内に入る温度自体は変わっていない中で、夏場の気温はどんどん上がっていくため、イタチごっこになってしまいます。
そのため、まずは、熱の入口をしっかりと遮断することが重要になります。その上で、建物内の熱を効率よく外に逃すための換気計画を行い、その後個人の装備をどうするか考える。この順番が、暑さ対策を進める上で頭に入れておきたいポイントです。
屋根に遮熱シートを施工する場合、工場の稼働への影響を心配される方も多いですが、作業を屋根の上で行うため、工場を止めずに施工できます。
長崎鐵工所様の施工時も、工場を稼働したまま施工しました。
遮熱シートは不燃性のためカーテンのように、炉を覆うことができます。これによって、炉から放出される輻射熱を大幅にカット。屋根の遮熱対策と合わせることで、徹底した暑さ対策になります。
鉄工所の暑さは、工場内の熱と屋根の輻射熱による二重の暑さです。その中で、まずは屋根からの輻射熱を対策することで、工場内温度を引き下げることができます。その後、炉や作業場周りへの遮熱対策を検討されるのがおすすめです。
工場内の温度改善は、熱中症の予防、加工精度の安定、働きやすい職場づくりへとつながります。
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