溶接ヒュームの測定が義務化!背景や方法、タイミングなどを解説
「溶接ヒュームについて義務化された措置の内容を知りたい」
溶接ヒュームによる健康被害を防止するために、法律で溶接ヒュームの測定が義務付けられました。
しかし、現場でどのように対応すべきかわからず、困っている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、法律で義務化されている溶接ヒュームの測定について紹介します。
義務化された背景や測定方法などの詳しい内容も解説するので、担当者様はぜひご覧ください。
溶接ヒュームの測定が義務化された背景
溶接ヒュームを長期間吸引すると健康障害を及ぼすおそれがあります。
溶接ヒュームによる健康被害から作業員を守るため、厚生労働省は特定化学物質障害予防規則(特化則)等を改正しました。
これにより、法律で溶接ヒュームの測定を含めた下記の健康障害防止措置が義務化されています。
・全体換気装置による換気等
・溶接ヒュームの測定、その結果に基づく呼吸用保護具の使用およびフィットテストの実施等
・掃除等の実施
・特定化学物質作業主任者の選任
・特殊健康診断の実施等
・その他必要な措置
法律は2021年4月1日から施行・適用されており、溶接ヒュームの測定は2022年3月31日までに実施している必要があります。
実施できていない場合は、法令違反と判断され、行政指導や是正勧告の対象になるおそれがあります。
▼関連サイト
厚生労働省|金属アーク溶接等作業について 健康障害防止措置が義務付けられます
義務化された溶接ヒューム測定の実施者の要件が2026年10月から明確化
具体的には以下のとおりです。
・第一種作業環境測定士
・作業環境測定機関
・化学分析技能検定1級に合格した者(自身が所属している事業所で採取されたサンプルに限る) など
これまでは資格などがない人でも、十分な知識や経験があれば、溶接ヒュームの濃度測定を実施できました。
しかし、2026年10月以後は、専門家に依頼しなければなりません。
まだ溶接ヒュームの濃度測定を実施できていないのであれば、早急に対応する必要があります。
▼関連サイト
厚生労働省|有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令等の施行について
義務化された溶接ヒュームの測定方法
まず、作業者の呼吸域付近に試料採取機器(サンプラー)を装着して通常通りの作業を行い、空気を採取します。
そして、採取した試料空気からマンガンの含有量を計測し、マンガン濃度を測定します。
国が定めるマンガン濃度の基準値は0.05mg/m3(立法メートル)です。
測定結果が基準値を下回った場合、換気装置の風量増加などの措置を行う必要はありません。
なお、試料採取機器を用いた測定は、均等ばく露作業ごとにそれぞれ2名以上の作業者に対して実施します。
均等ばく露作業とは作業者にばく露される溶接ヒュームの量がほぼ均一だと見込まれる作業のことです。
試料空気の採取時間は、採取する作業日ごとに、作業者が金属アーク溶接作業に従事する全時間が対象です。
義務化された溶接ヒュームの測定を行うタイミング
・まだ測定を実施していない場合
・新たに金属アーク溶接などの作業を開始する場合
・作業方法を変更する場合
・測定結果に基づく改善措置を行ったあと
作業方法の変更については、溶接方法や溶接材料の変更など、溶接ヒュームの濃度に大きな影響を与える場合に限られます。
なお、溶接ヒュームの測定は定期的な実施が義務付けられていないため、上記のタイミングで測定を実施すれば問題ありません。
法令によって義務化された測定以外の溶接ヒュームへの対策
・作業場の空間全体を換気する
・適切な防護マスクの使用と定期的なフィットテストを実施する
・作業場の掃除を定期的に実施する
・特定化学物質作業主任者を選任する
・特定化学物質健康診断を定期的に実施する
・作業環境の整備や従業員に安全衛生教育を実施する
それぞれ詳しく解説するので、ご覧ください。
作業場の空間全体を換気する
溶接ヒュームへの対策として、全体換気装置による換気や同等以上の措置が義務付けられています。
全体換気装置とは、動力により工場全体の空気を換気する装置です。
清浄な外気を取り込み、作業内の有害物質と混ぜ合わせながら場外に排出します。
同等以上の措置とは、プッシュプル型換気装置、局所排気装置などの設置です。
作業場の溶接ヒュームを換気で減少させることで、作業員の健康被害のリスクを抑制できます。
全体換気装置は、特定化学物質作業主任者による1ヶ月を超えない周期での点検が必要です。
なお、遮熱やさん(運営:植田板金店)なら換気計画を通じて作業者がばく露するリスクを低減できます。
換気計画による工場の環境改善を検討される際は、ぜひお気軽にご相談ください。
換気計画の詳細はこちら
全体換気装置とは、動力により工場全体の空気を換気する装置です。
清浄な外気を取り込み、作業内の有害物質と混ぜ合わせながら場外に排出します。
同等以上の措置とは、プッシュプル型換気装置、局所排気装置などの設置です。
作業場の溶接ヒュームを換気で減少させることで、作業員の健康被害のリスクを抑制できます。
全体換気装置は、特定化学物質作業主任者による1ヶ月を超えない周期での点検が必要です。
なお、遮熱やさん(運営:植田板金店)なら換気計画を通じて作業者がばく露するリスクを低減できます。
換気計画による工場の環境改善を検討される際は、ぜひお気軽にご相談ください。
換気計画の詳細はこちら
適切な防護マスクの使用と定期的なフィットテストを実施する
溶接ヒュームの濃度測定の結果に応じて、適切なフィルター性能を備えた防護マスクの装着が必要です。
マスクは溶接ヒュームの測定結果から「要求防護係数」を算定し、その数値を上回る「指定防護係数」を有するマスクを選びます。
基準を満たす性能のマスクがしっかり密着していれば、マスク内に溶接ヒュームが侵入する心配は、ほとんどありません。
また、マスクが隙間なく密着しているか確認するフィットテストの定期的な実施も義務化されています。
フィットテストの頻度は1年以内ごとに1回です。
ただし、面体の変更や体重の著しい増減など、マスクの密着性に影響ある変化が着用者に生じた際もフィットテストが必要です。
これらは法令により義務化されているため、必ず実施しましょう。
▼関連記事
溶接ヒューム対策でマスクのフィットテストが義務化!背景や方法などを解説
マスクは溶接ヒュームの測定結果から「要求防護係数」を算定し、その数値を上回る「指定防護係数」を有するマスクを選びます。
基準を満たす性能のマスクがしっかり密着していれば、マスク内に溶接ヒュームが侵入する心配は、ほとんどありません。
また、マスクが隙間なく密着しているか確認するフィットテストの定期的な実施も義務化されています。
フィットテストの頻度は1年以内ごとに1回です。
ただし、面体の変更や体重の著しい増減など、マスクの密着性に影響ある変化が着用者に生じた際もフィットテストが必要です。
これらは法令により義務化されているため、必ず実施しましょう。
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作業場の掃除を定期的に実施する
作業場で粉じんが飛散しない方法で、毎日1回以上の清掃が義務付けられています。
清掃は水洗いなど、溶接ヒュームが飛び散らない方法で行う必要があります。
水洗いが難しい場合は超高性能なHEPAフィルター付き真空掃除機も使用可能ですが、排気による粉じんの再飛散に注意が必要です。
また、作業場の床を水洗いなどがしやすい構造にすることも求められています。
清掃は水洗いなど、溶接ヒュームが飛び散らない方法で行う必要があります。
水洗いが難しい場合は超高性能なHEPAフィルター付き真空掃除機も使用可能ですが、排気による粉じんの再飛散に注意が必要です。
また、作業場の床を水洗いなどがしやすい構造にすることも求められています。
特定化学物質作業主任者を選任する
特定化学物質作業主任者の選任も義務付けられています。
選任された作業主任者は、労働者の健康障害を防ぐために下記に挙げる業務への従事が必要です。
・作業方法の決定や指揮
・全体換気装置などの設備について1ヶ月を超過しない周期で点検
・保護具の使用状況の監視 など
また、作業主任者は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了している者から選任します。
選任された作業主任者は、労働者の健康障害を防ぐために下記に挙げる業務への従事が必要です。
・作業方法の決定や指揮
・全体換気装置などの設備について1ヶ月を超過しない周期で点検
・保護具の使用状況の監視 など
また、作業主任者は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了している者から選任します。
特定化学物質健康診断を定期的に実施する
溶接ヒュームを扱う作業に常時従事する労働者には、特定化学物質健康診断の実施も必要です。
雇入れ時や配置換えの際、その後は6ヶ月以内ごとに定期健診(1次健診)を行い、医師が必要と認めた場合は2次健診を実施します。
会社は結果の本人通知、個人票の5年間の保存、および労働基準監督署長への報告義務を負います。
雇入れ時や配置換えの際、その後は6ヶ月以内ごとに定期健診(1次健診)を行い、医師が必要と認めた場合は2次健診を実施します。
会社は結果の本人通知、個人票の5年間の保存、および労働基準監督署長への報告義務を負います。
作業環境の整備や従業員に安全衛生教育を実施する
作業環境の整備として不浸透性の床、休憩室、洗浄設備の設置などが求められています。
また、関係者以外の立入禁止措置や、作業場内での飲食・喫煙を禁止する旨の表示も必要です。
さらに、労働者への安全衛生教育の実施や、汚染されたウエス等を適切に処理することも義務付けられています。
また、関係者以外の立入禁止措置や、作業場内での飲食・喫煙を禁止する旨の表示も必要です。
さらに、労働者への安全衛生教育の実施や、汚染されたウエス等を適切に処理することも義務付けられています。
義務化された溶接ヒュームの測定を実施して安全な職場環境を作ろう
測定できていない場合は、法令違反と判断され、行政指導や是正勧告の対象になるおそれがあります。
また、2026年10月から溶接ヒューム測定の実施者の要件が明確化されるため、未測定の場合は早急な対応がおすすめです。
溶接ヒュームの測定を適切に行い、従業員が安心して働ける職場を作りましょう。
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工場の労働環境を改善したい!課題や対処法、取り組む必要性も解説










