工場の暑さ対策に換気は役立つ？暑熱の原因や効率的な対策も解説
「工場の暑さ対策に換気は有効？」
「換気の方法にはどんなものがある？」
上記の疑問は、工場の暑さを効率的に対策したいと考えている方によくあるものです。
工場における換気は、新鮮な空気を取り入れて熱気や汚れた空気を排出することを指します。
換気方法にはいくつかの種類があり、暑さ対策の一貫として知っておくのがおすすめです。
本記事では工場で用いられる換気方法の種類や効率的な熱対策方法、個人でできる暑熱対策を解説します。
工場に用いられる換気の方法には、下記があります。
・置換換気
・局所換気
・プッシュプル換気
以下では、それぞれの方法を具体的に解説します。
置換換気は室温よりも冷たい空気を外から取り入れ、工場全体の空気を入れ替える方法です。
冷気は下方に、熱気は上方に移動する仕組みを利用して、吹き出し口を低くし排気口を天井付近に設置します。
外気が高温だと室内の冷却効果が低くなるので、空調システムと併用することが多いです。
エアコンなどで外気を冷却すると室温を下げられますが、電気代が増大しがちです。
特に工場のような広く熱気がこもりやすい空間での稼働には、多大なエネルギーを要します。
また暖気を室内に留めておきたい冬場には、暖房負荷が高くなりやすい点もデメリットです。
局所換気とは、部分的に換気をする方法です。
家庭で事例を挙げると、台所や浴室にある換気扇が局所換気に該当します。
工場内における局所換気の目的は、熱気や有害物質が生じる機械設備の周りを集中的に排気し職員の健康被害を予防することです。
有害物質が発生しやすい溶接作業場や化学反応装置の周辺では、可動式の排気口を職員の前に配置する場合があります。
プッシュプル換気とは、一方から新鮮な空気を押し込み（プッシュ）、他方から熱気などを抜く（プル）シンプルな換気方法です。
熱気や有害物質の発生源を挟むように吹き出し口と排気口が位置し、効率的に空気を流します。
ピンポイントで換気できるので工場内に熱気が広がりにくく、働きやすい職場環境を実現できます。
また大きな換気システムを設置する必要がないため、狭い空間でも導入しやすい点がメリットです。
希釈換気は新鮮な外気を室内に送り続け、工場内に充満している熱気や有害物質を希釈します。
ピンポイントでの排気はせず全体的に空気を混合して入れ替えるので、局所換気などと比べると換気効率は低いです。
置換換気とは違い、外気をそのまま取り入れるため熱源を要しません。
導入コストが比較的低くシンプルな構造のため、汎用性の高い換気システムです。
工場の暑さを換気だけで対応しづらい理由は、暑さの要因が太陽からの輻射熱であるためです。
輻射熱は電磁波によって伝わる熱で、熱源物質から熱を受ける物質に接触した瞬間エネルギー化される特徴があります。
輻射熱は空気の流れに一切影響されないため、工場内を換気しても対策が困難です。
輻射熱で工場の屋根は高温になり、場合によっては最大80度まで上昇することがあります。
屋根に当たる輻射熱は工場内にも伝わり、職員の健康に悪影響を及ぼしかねません。
換気システムは工場内の汚れた空気の排出には有効ですが、夏場の暑さを解決するには物足りないといえます。
工場内が猛暑になりやすい理由は、太陽からの輻射熱の他に機械の排気熱や熱がこもりやすい構造があります。
熱は一般的に温度の高いほうから低いほうへ移動する性質があり、工場内では比較的低温の人体に集中しがちです。
太陽や機械から発せられる輻射熱や機械の排気熱がすべて人体に向かうと、体感温度は大きく上がります。
大型の機械設備があったり窓が少なかったりする点も、工場内に熱がこもりやすい要因です。
熱伝導率の高い金属製の屋根材を使用していると、さらに室温は上昇します。
換気以外でおすすめの工場の暑さ対策は、下記のとおりです。
・遮熱材の設置
・遮熱シートの設置
・遮熱塗料の塗装
・遮熱屋根材の施工
・断熱材の設置
・屋根上スプリンクラーの導入
以下では、それぞれの対策を具体的に解説します。
遮熱材とは太陽からの熱を反射することで、輻射熱をカットする素材です。
さまざまなタイプがあり、屋根・外壁の内部や屋根上などに設置できます。
遮熱やさん（運営：植田板金店）の「シャネリア」は、下地材の防水シート上に施工する遮熱材です。
高純度のアルミ箔やポリエチレンで形成されており、輻射熱の97%をカットできます。
ある調査では64.5度あった屋根裏の温度が、シャネリアの施工により32.5度まで下がったことがわかりました。
超薄型素材のシャネリアは汎用性が高く、既存の屋根上から新たな屋根材を被せるカバー工法にも適しています。
遮熱シートは、反射性に優れたアルミ箔により太陽の輻射熱をカットしてくれるクロス状の素材です。
屋根の表面に沿って貼り付けるように設置するため、大掛かりな工事が要らず費用を抑えやすいです。
塗装のように職人の技量による塗りムラや天候に左右されず、安定した遮熱効果を実現できます。
遮熱やさん（運営：植田板金店）のスカイ工法は、輻射熱の97%をカットできるスカイシートを屋根表面に施工する工法です。
室温を大幅に下げるだけでなく、雨漏りへの対策にも適しています。
遮熱機能のある塗料で屋根や外壁を塗装することも、輻射熱をカットする有効な手段です。
遮熱塗料は、塗装が可能な屋根材であればどんな屋根材にも適用できます。
屋根の状態によっては下地処理を施すことがありますが、通常大掛かりな工事を要しません。
ただし仕上がりは塗料の性能や職人の技量に左右されやすく、費用対効果は不明確です。
一般的に遮熱塗料の熱の反射率は60〜80％程度とされており、反射率が90％以上の遮熱シートに比べて効果は低めです。
遮熱機能のある屋根材を選ぶと、長期的に輻射熱をカットできます。
遮熱屋根材には瓦や金属屋根などさまざまなタイプがあり、好みに合わせてデザインを選べます。
設置のタイミングは新築時もしくは葺き替え時ですが、葺き替えの場合は費用と工期は増大しがちです。
カバー工法で新しい屋根材に遮熱機能のあるものを選ぶと、古い屋根の撤去費用を抑えられます。
二重構造となるので十分な遮熱効果と防水性・防音性も向上する点が、カバー工法のメリットです。
断熱材は遮熱材とは異なり、熱を反射せず緩やかに吸収する素材です。
断熱材には気体や液体が動くことで伝わる対流熱や、直接の接触を介して熱が伝わる伝導熱を防ぐ効果があります。
遮熱材には対流熱と伝導熱を防ぐ効果はないので、両者を併用することで効率的な熱対策が可能です。
断熱材は熱の伝導を遅くするので、冬には暖気を室内に留めておく効果もあります。
熱の吸収により素材自体が高温になりやすい点、空気の層を多く含み厚みがある点も遮熱材との違いです。
屋根上にスプリンクラーを設置すると、屋根の表面が高温になるのを和らげられます。
スプリンクラーのメリットは、屋根材の種類にかかわらず導入できる点です。
ただし夏の猛暑を和らげるには多量の散水を要するため、水道代が高額になりやすい傾向にあります。
金属製の屋根の場合、屋根に散水することで錆びの発生リスクが高まる点もデメリットです。
工場内を過ごしやすい室温にするには、輻射熱をカットできる遮熱材の屋根への導入がおすすめです。
遮熱シートは比較的容易に設置でき高い遮熱率があるので、費用対効果が高い選択肢といえます。
ただし、設置できる屋根の条件に合致するかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
屋根材に劣化があれば、カバー工法で遮熱材を取り入れると効率的に問題を解決できます。
夏の工場内では、個人でできる暑熱対策も重要です。
保冷剤などを首周りに身に付けておくと、体温の上昇を和らげられます。
コンパクトタイプの保冷剤はヘルメットの中にも入れられ、邪魔にならないので便利です。
内蔵ファンにより空気を自動的に取り込むファン付き作業着は、個々人の快適な勤務に役立ちます。
上記に加えこまめな水分補給や塩分の摂取を心がけることで、熱中症のリスクを低くできます。
遮熱材で輻射熱をカットして快適な職場環境を目指そう
