溶接ヒューム対策でマスクのフィットテストが義務化!背景や方法などを解説
「フィットテスト以外の溶接ヒューム対策についても知りたい」
溶接ヒューム対策のために、法律で溶接マスクのフィットテストが義務化されました。
しかし、義務化の内容やフィットテストの方法などがわからず、お困りの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、溶接ヒューム対策で義務化されたマスクのフィットテストについて紹介します。
義務化の背景やテストの方法などを解説するので、ぜひご覧ください。
金属アーク溶接等を行う作業場でマスクのフィットテストが義務化された背景
金属アーク溶接などで発生する「溶接ヒューム」を長期間吸引すると、健康障害を及ぼすおそれがあると判明しています。
溶接ヒュームとは、アーク溶接の際に発生する、熱で溶けた金属蒸気が空気中で冷却・凝固した金属の微細な粒子のことです。
中毒性がある有害物質で、吸い込むと体内に蓄積していきます。
主な有害性として発がん性や神経機能障害、呼吸器系障害が挙げられます。
これらの健康被害から作業員を守るため、法律で下記の健康障害防止措置が義務化されました。
・全体換気装置による換気等
・溶接ヒュームの測定、その結果に基づく呼吸用保護具の使用及びフィットテストの実施等
・掃除等の実施
・特定化学物質作業主任者の選任
・特殊健康診断の実施等
・その他必要な措置
法律は令和3年(2021年)4月1日から施行・適用、フィットテストの実施は令和5年(2023年)4月1日より施行されています。
金属アーク溶接などを行っている作業場では、健康障害防止措置に対応するために、マスクのフィットテストの実施が必要です。
▼関連サイト
厚生労働省|金属アーク溶接等作業について健康障害防止措置が義務付けられます
義務化された溶接マスクのフィットテストの内容
・溶接マスクのフィットテストとは
・対象となる作業場
・フィットテストが必要となる溶接マスクの種類
・フィットテストを行う頻度
それぞれ詳しく解説するので、ぜひご覧ください。
溶接マスクのフィットテストとは
溶接マスクのマスクフィットテストは、作業に使用するマスクが隙間なく密着しているかを確認する試験のことです。
マスクのフィルター性能が高くても、マスクと顔の密着が不十分だと本来の性能が発揮されません。
密着が不十分なマスクだと、顔の隙間から侵入した有害物質を吸い込んでしまい、健康を害するリスクが生じます。
そのような事態を防ぐためにも、定期的なフィットテストによるマスクの密着性の確認が重要です。
事業者には、1年以内ごとに1回のマスクフィットテストの実施と3年間の記録保存が義務付けられています。
マスクのフィルター性能が高くても、マスクと顔の密着が不十分だと本来の性能が発揮されません。
密着が不十分なマスクだと、顔の隙間から侵入した有害物質を吸い込んでしまい、健康を害するリスクが生じます。
そのような事態を防ぐためにも、定期的なフィットテストによるマスクの密着性の確認が重要です。
事業者には、1年以内ごとに1回のマスクフィットテストの実施と3年間の記録保存が義務付けられています。
対象となる作業場
溶接マスクのフィットテストの義務化の対象となるのは、以下の作業場です。
・金属アーク溶接などの作業を継続して行う屋内作業場
・作業環境測定の結果が「第三管理区分」に分類された作業場
「第三管理区分」とは、有害物質の濃度や粉じん等が一定水準より高く、通常の改善措置では改善が困難と判断される区分です。
第三管理区分に分類された場合、測定結果に応じて作業者に有効な呼吸保護具を使用させる必要があります。
これらに該当する作業場では、マスクのフィットテストが義務付けられます。
・金属アーク溶接などの作業を継続して行う屋内作業場
・作業環境測定の結果が「第三管理区分」に分類された作業場
「第三管理区分」とは、有害物質の濃度や粉じん等が一定水準より高く、通常の改善措置では改善が困難と判断される区分です。
第三管理区分に分類された場合、測定結果に応じて作業者に有効な呼吸保護具を使用させる必要があります。
これらに該当する作業場では、マスクのフィットテストが義務付けられます。
フィットテストが必要となる溶接マスクの種類
マスクフィットテストが必要なのは、面体を持つ呼吸保護具です。
厚生労働省が参考として例示している種類は以下のとおりです。
・取り替え式全面形面体防じんマスク
・取り替え式半面形面体防じんマスク
・使い捨て式防じんマスク
・全面形面体電動ファン付き呼吸用保護具
・半面形面体電動ファン付き呼吸用保護具
ルーズフィット形電動ファン付き呼吸用保護具は対象外です。
マスクの種類は作業場の溶接ヒュームの測定結果から「要求防護係数」を算定し、その数値をもとに決定します。
要求防護係数とは、溶接ヒュームに含まれるマンガン濃度の最大値を基準値で割って算出する数値です。
使用するマスクの種類は、算出された要求防護係数を超える「指定防護係数」を有するものから選びます。
基準を満たすマスクがしっかり密着していれば、マスク内に溶接ヒュームが入り込む心配がほとんどありません。
厚生労働省が参考として例示している種類は以下のとおりです。
・取り替え式全面形面体防じんマスク
・取り替え式半面形面体防じんマスク
・使い捨て式防じんマスク
・全面形面体電動ファン付き呼吸用保護具
・半面形面体電動ファン付き呼吸用保護具
ルーズフィット形電動ファン付き呼吸用保護具は対象外です。
マスクの種類は作業場の溶接ヒュームの測定結果から「要求防護係数」を算定し、その数値をもとに決定します。
要求防護係数とは、溶接ヒュームに含まれるマンガン濃度の最大値を基準値で割って算出する数値です。
使用するマスクの種類は、算出された要求防護係数を超える「指定防護係数」を有するものから選びます。
基準を満たすマスクがしっかり密着していれば、マスク内に溶接ヒュームが入り込む心配がほとんどありません。
フィットテストを行う頻度
フィットテストの頻度は、1年以内ごとに1回とされています。
ただし、以下のタイミングでもマスクのフィットテストを実施する必要があります。
・面体を有する呼吸保護具を選択するとき
・面体を変更するとき
また、着用者に以下のような変化があった場合も、必ずマスクのフィットテストを行います。
・体重の著しい増減があった場合
・怪我や手術などにより面体と密着する部分に変化があった場合
・抜歯などにより歯列の変化があった場合
・着用時に不快感がある場合
これらはマスクの密着性に影響を与えるおそれがあります。
そのため、必要なタイミングで随時マスクのフィットテストを実施し、密着性に問題がないか確認してください。
ただし、以下のタイミングでもマスクのフィットテストを実施する必要があります。
・面体を有する呼吸保護具を選択するとき
・面体を変更するとき
また、着用者に以下のような変化があった場合も、必ずマスクのフィットテストを行います。
・体重の著しい増減があった場合
・怪我や手術などにより面体と密着する部分に変化があった場合
・抜歯などにより歯列の変化があった場合
・着用時に不快感がある場合
これらはマスクの密着性に影響を与えるおそれがあります。
そのため、必要なタイミングで随時マスクのフィットテストを実施し、密着性に問題がないか確認してください。
義務化された溶接マスクのフィットテストの方法
テストは下記の2種類があります。
・定量的フィットテスト
・定性的フィットテスト
それぞれどのようなテストか解説するので、ぜひご覧ください。
定量的フィットテスト
定量的フィットテストは呼吸用保護具の外側・内側それぞれの測定対象物質の濃度を測定し、数値で評価する方法です。
数値はフィットファクタと呼ばれ、呼吸保護具外の測定対象物質の濃度を呼吸保護具内の測定対象物質の濃度で割って算出します。
そして算出されたフィットファクタが、下記の要求フィットファクタを上回っているかを確認します。
・全面形面体を有する呼吸用保護具:500
・半面形面体を有する呼吸用保護具:100
客観的な数値で細かく示されるため、不合格の場合も改善方法を明確にできます。
数値はフィットファクタと呼ばれ、呼吸保護具外の測定対象物質の濃度を呼吸保護具内の測定対象物質の濃度で割って算出します。
そして算出されたフィットファクタが、下記の要求フィットファクタを上回っているかを確認します。
・全面形面体を有する呼吸用保護具:500
・半面形面体を有する呼吸用保護具:100
客観的な数値で細かく示されるため、不合格の場合も改善方法を明確にできます。
定性的フィットテスト
定性的フィットテストは、被験者が味や臭いを感じるかどうかで密着性を確認する方法です。
ごく少量でも甘味か苦みを感じる試験物質を使用し、呼吸保護具をした状態でその味を感じるかどうかで合否を判定します。
比較的低コストでフィットテストを実施でき、合否判定も可能ですが、数値化されないので詳細がわからないのが注意点です。
ごく少量でも甘味か苦みを感じる試験物質を使用し、呼吸保護具をした状態でその味を感じるかどうかで合否を判定します。
比較的低コストでフィットテストを実施でき、合否判定も可能ですが、数値化されないので詳細がわからないのが注意点です。
マスクのフィットテスト以外に実施できる溶接ヒュームへの対策
・換気設備の導入
・自動溶接機の導入
・低ヒューム溶剤の使用
それぞれ詳しく解説するので、フィットテストとあわせて実施できるものは、ぜひ導入をご検討ください。
換気設備の導入
溶接ヒュームへの対策として全体換気装置による換気や同等以上の措置も講じる必要があります。
全体換気装置は、動力で作業場全体の換気を行う装置のことです。
「同等以上の措置」とは、プッシュプル型換気装置、局所排気装置などです。
これらにより、作業場の溶接ヒュームを減少させ、健康被害のリスクを抑制できます。
なお、全体換気装置は、特定化学物質作業主任者が1ヶ月を超えない期間ごとに点検する必要があります。
全体換気装置は、動力で作業場全体の換気を行う装置のことです。
「同等以上の措置」とは、プッシュプル型換気装置、局所排気装置などです。
これらにより、作業場の溶接ヒュームを減少させ、健康被害のリスクを抑制できます。
なお、全体換気装置は、特定化学物質作業主任者が1ヶ月を超えない期間ごとに点検する必要があります。
自動溶接機の導入
自動溶接機とは、常に操作していなくても自動で連続的に溶接を行う機械のことです。
作業者が溶接作業を直接行わなくなるため、ヒュームにさらされにくくなります。
自動溶接機の導入にあわせて密閉化すれば、ヒュームにさらされるケースがほとんどなくなります。
ただし、換気装置の併用が必要となり、作業内容によっては自動化が困難です。
さらに、ヒュームによる自動溶接機の故障リスクや、コスト負担が大きい点なども課題です。
作業者が溶接作業を直接行わなくなるため、ヒュームにさらされにくくなります。
自動溶接機の導入にあわせて密閉化すれば、ヒュームにさらされるケースがほとんどなくなります。
ただし、換気装置の併用が必要となり、作業内容によっては自動化が困難です。
さらに、ヒュームによる自動溶接機の故障リスクや、コスト負担が大きい点なども課題です。
低ヒューム溶剤の採用
低ヒューム溶剤とは、溶接時に発生するヒュームの量を抑えるよう成分を調整した溶接材料のことです。
従来の溶剤から切り替えても、作業内容を大きく変更する必要はなく、費用もほとんど変わりません。
ただしヒュームの発生量が減少するとはいえ、ゼロにはならないため、マスクの着用や換気装置の併用は必要です。
また、使用できる低ヒューム溶剤の種類が限られているため、すべての溶接材料を置き換えられるわけではありません。
従来の溶剤から切り替えても、作業内容を大きく変更する必要はなく、費用もほとんど変わりません。
ただしヒュームの発生量が減少するとはいえ、ゼロにはならないため、マスクの着用や換気装置の併用は必要です。
また、使用できる低ヒューム溶剤の種類が限られているため、すべての溶接材料を置き換えられるわけではありません。
義務化された溶接マスクのフィットテストを適切に実施して安全安心な職場環境を作ろう
マスクが密着していないと溶接ヒュームを吸い込んでしまい、がんや神経機能障害、呼吸器系障害などの健康被害につながる危険があります。
ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、溶接マスクのフィットテストを実施して、従業員が安心して働ける職場環境を整えましょう。
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