近年の猛暑によって、気温は年々高くなっています。

この猛暑下で「工場内が暑い状態のままであるのは違法になるのだろうか」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、工場が暑いのが違法になるのか、暑さ対策として何ができるのか、おすすめの暑さ対策である「遮熱」の効果まで、詳しく解説しています。

従業員の健康と安全を守るためにも、できる限りの暑さ対策を実践していきましょう。

工場が暑いと違法になる場合がある

工場内が暑いからといって、ただちに違法となるわけではありません。

しかし、工場内が極端に暑く従業員が不調に陥りやすい状態であるのを把握していたにもかかわらず問題を放置すると、法的責任を問われるケースもあります。

なぜなら、企業には従業員の安全に配慮する義務があるからです。

極端に暑い職場環境を放置することにより従業員の健康に悪影響を及ぼしてしまった場合、企業は安全配慮義務を怠ったと裁判所に判断されるケースがあります。

仮に安全配慮義務違反とは判断されなくても、社員やその家族から訴訟されると、裁判に対応するための弁護士費用や対応にかける時間といったコストがかかります。

他にも、離職した社員がネットの口コミサイトに自社の悪評を書き込んでしまうリスクもあるはずです。

このように工場内の暑さを放置すると、様々な労使トラブルを招いてしまいかねません。

職場が暑くなりすぎないように、適切な暑さ対策を講じましょう。

工場の暑さ対策の法的義務

ここでは、工場が暑さ対策を実施して従業員の健康を守らなければならない法的な理由をご紹介します。

・労働安全衛生法に基づく義務
・厚生労働省による熱中症予防の呼びかけ

以下の暑さ対策が必要となるケースについて見ていきましょう。

労働安全衛生法に基づく義務

労働安全衛生法とは、厚生労働省が発行した省令のことです。

（事業者等の責務）
第三条　事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
２　機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない。
３　建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない。
引用：労働安全衛生法｜e-Gov

労働安全衛生規則では高温多湿な作業場所における、具体的な対策が定められています。

例えば換気の実施、作業時間の短縮や休憩時間の確保などが挙げられます。

企業はこれらの措置を講じて、従業員が快適に作業できる環境を維持するよう努めなければなりません。

もし適切な対策を怠った結果として従業員に健康被害が発生した場合、企業は安全配慮義務違反として法的責任を問われる可能性があります。

厚生労働省による熱中症予防の呼びかけ

厚生労働省は、ホームページやチラシなどを通じて、職場における熱中症予防対策を行うことを推奨しています。

具体的な対策として、作業場所の気温や湿度の管理などを挙げています。

他にも、適切な水分・塩分補給の促進や作業内容や休憩時間の調整、従業員に対する熱中症に関する教育や啓発活動も重要です。

このような対策を講じることで従業員の健康を守るだけでなく、企業の生産性維持にもつながるはずです。

熱中症は安全配慮義務違反に該当する可能性がある

夏の暑さ対策を怠って従業員が熱中症を発症した場合、それは企業の安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

単に従業員が熱中症になったという事実だけですぐに違反とはなりません。

しかし企業側の適切な対策不足が認められる場合は、法的責任が生じる可能性があります。

以下では、安全配慮義務の内容やどのような状況で熱中症が安全配慮義務違反となるのかを解説します。

安全配慮義務とは

企業の経営者は雇用している従業員に対して、安全配慮義務を負っています。

安全配慮義務とは、従業員が安全かつ健康な状態で労働できるように必要な配慮を行わなければならないという法律上の義務のことです。

（労働者の安全への配慮）
第五条　使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用：労働契約法｜e-Gov

作業環境の安全管理を徹底したり、業務中に起こりうる事故を未然に防いだりするための対策を講じることが求められます。

安全配慮義務違反になる場合

仮に従業員が熱中症になったとしても、すぐに安全配慮義務違反となるわけではありません。

重要なのは、熱中症が企業側の安全配慮義務の欠如によって引き起こされたかどうかです。

たとえば、気温が高い日に適切な空調設備を使用せずに作業を強行して熱中症が発症した場合、安全配慮義務違反と認められるリスクが高まります。

安全配慮義務違反とならないよう、経営者は作業員が作業をしやすい環境を整えなければなりません。

違法にならないように取り組むべき工場の暑さ対策

工場における暑さ対策は、労働者の健康と安全を守るうえで必要です。

労働安全衛生法に基づき事業者は適切な作業環境を整備する義務があります。

・空調設備の導入や更新
・扇風機やスポットクーラーを導入する
・断熱工事によって熱の侵入を防ぐ
・遮熱工事で熱を反射させる

以上のような暑さ対策を講じて、暑さ対策を行いましょう。

空調設備の導入や更新

暑さ対策に取り組むなら、工場で使用する空調設備の導入や更新がおすすめです。

工場内の室温が適温になるよう維持・管理することで、熱中症のリスクを低減できます。

最新の空調設備は省エネ性能も高く、光熱費の削減にも繋がります。

空調機器の性能が良くなれば、夏場の暑さ対策だけでなく冬場の寒さ対策にも活用できるため、一年を通して快適な作業環境を実現しやすいです。

扇風機やスポットクーラーを導入する

作業員の作業場所のみピンポイントで暑さ対策を実施するなら、扇風機やスポットクーラーの導入がおすすめです。

扇風機やスポットクーラーを従業員へピンポイントに送風することで、体感温度が下がります。

エアコンをはじめとしたその他の空調設備と併用すれば、より効果的な暑さ対策を実現できるでしょう。

断熱工事によって熱の侵入を防ぐ

断熱工事を行うことによって、工場に入ってくる熱を抑えられます。

工場の屋根や壁に断熱材を導入すれば、外部からの熱気や日射による室温の上昇が抑制できます。

室内の温度変化を緩やかにし、空調と併用することで効率も高まるでしょう。

他の暑さ対策と組み合わせやすく、効果的に暑さ対策ができるのが特徴です。

遮熱工事で熱を反射させる

遮熱工事を行うことで、太陽光や機械から発生する「輻射熱」を反射することで、工場内の温度上昇を抑制できます。

工場内に入ってくる屋根や壁の表面温度が下がるうえ、輻射熱が工場内に侵入しないため、室温が上がりにくくなります。

これにより冷房負荷が軽減され、冷房費を大幅に削減しやすいです。

遮熱工事は遮熱塗料の塗布や遮熱シートの設置など、様々な方法で行われます。

暑さ対策として工場屋根の遮熱工事がおすすめな理由

工場の屋根に暑さ対策を行うことは、従業員の労働環境改善に大きく貢献します。

施工方法は複数ありますが、その中でも「遮熱工事」は特に効果が高くておすすめの方法です。

【遮熱工事がおすすめの理由】
・工場内の温度の上昇を抑制する効果が高いから
・光熱費が削減できるから
・屋根材の劣化を抑えられるから

理由について、一つずつ見ていきましょう。

工場内の温度の上昇を抑制する効果が高いから

遮熱工事は工場内の温度上昇を抑制する効果が高いです。

工場の屋根に遮熱工事を行うことによって、太陽からの熱を効率的に反射できるからです。

工場の屋根は面積が広く、太陽光からの熱の影響を大きく受けます。

そこで工場屋根に遮熱工事を行うことで、効率的に暑さを対策できます。

遮熱工事を行うことによって真夏日でも工場内の温度上昇を抑え、快適な作業環境を維持しやすくなるでしょう。

光熱費が削減できるから

工場屋根に遮熱工事を行えば、毎月かかる光熱費の削減が期待できます。

たとえば遮熱を行って工場内の気温が上がりにくくなれば、冷房を強くかける必要がなくなるため、電気代を抑えられます。

屋根材の劣化を抑えられるから

工場屋根への遮熱工事は単に暑さ対策となるだけでなく、建物の耐久性向上にも効果があります。

遮熱塗料やシートは、太陽光に含まれる有害な紫外線を反射する効果があります。

紫外線は屋根材を劣化させる要因の一つです。

遮熱工事によって紫外線の影響を軽減すれば、屋根材の寿命を延ばせます。

遮熱工事は、工場屋根の長期的なメンテナンスコストの削減にも繋がります。

違法にならないよう工場屋根の遮熱工事を実施して暑さ対策を行おう

工場における暑さ対策として、屋根の遮熱工事は有効な手段です。

夏の強い日差しによる熱を反射させることで、工場内の温度上昇を抑制します。

工場内の暑さが和らぐことで、従業員がより快適に作業できる環境を実現できます。

暑さによる作業効率の低下を防ぎながら熱中症のリスクを軽減するためにも、遮熱工事は積極的に検討すべき対策です。

労働基準法においても、事業者は労働者の健康と安全を確保する義務が定められています。

法令遵守のためにも、工場屋根の遮熱工事をぜひご検討ください。